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東アジア青年交流プロジェクトのブログ

中国の自然エネルギー(世界一の風力発電) 知足章宏さん講演録①

 

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 中国の公害の現場などに行き、深刻な汚染を目の当たりにしてきました。中国の環境問題には二面性があります。一つは深刻な産業汚染です。ガン発症率が高く非公式含めて459村の「癌村」が報告されています。上海から内陸部へ「汚染リレー」が進行しています。大気汚染は、中国の研究者が何十年も解決しないと言っているほどです。もう一つは、風力発電など再生可能エネルギーの膨大な潜在力です。ただし、同時に原子力発電も推進しています。

 浙江省の鉛蓄電池の製造工場周辺で住民の血中鉛濃度が高くなっている事例や、雲南省の癌村の調査から分かることは、貧しい地域で汚染被害が深刻化していることです。『新世紀』など一部の雑誌に限られますが、汚染の実態を取材して発表する記者も出ています。

 風力発電の設備容量は世界中で増えています。中国が一番です。2004年まではほとんどなかったのですが、2006年あたりから小規模なものから大規模なものが出てきて、この5年で爆発的に増えています。風況がよい内モンゴルで大規模なものが設置されています。ただし、発電量がまだ少ないという問題もあります。風力が732kWh太陽光9kWhです。日本との違いは増量計画が数字できちんと出ることです。計画経済の流れですが、目標と結果が違った場合は新しい数字を出し直します。昨年、国家発展改革委員会が「風力発電ロードマップ2050」を作成して、風力を普及させて電気料金を引き下げる計画を立てました。まだほとんどないのですが海上風力も増やす計画です。

風況のよいところに国が大規模な風力発電所を建設すると決定して進めるのですが、開発業者は900社が関わり、そのうち700社が国有企業です。利益は国に回ります。設備製造業者は70社で1社を除いてすべて国内資本か合併企業です。競争が激化した結果、風力バブルがはじけてリストラが横行していますが、設備製造1MWあたりで1314人の雇用を創出したとの試算があり、2011年の新規雇用は約25万人と推定されています。

国は、2003年から特許権風力発電プロジェクトを発動させて、競争入札制によって売電コストの引き下げと国産化率の上昇を狙いました。その結果、国際貿易上の問題を抱えたのですが、開発規模が拡大しました。資本力があって国からの補助金を受けている国営企業が落札しています。国策による風力発電増産で、利益は国営企業に集中しています。

2006年施行の再生可能エネルギー法では、発送電分離して電力会社に全量買い取りさせ、入札で決まった落札価格で買い取り額を決めるとしました。電気料金付加金制度をつくり、小売電気料金に上乗せした分を送配電企業に回して、送配電網の整備や風力発電の買い取り補充にあてています。風力発電が集中立地する地域の企業に買い取り負担が偏るのを避けるため配分の仕組みを整えています。

 企業が直面している課題は原材料価格の上昇と過剰生産による低価格競争です。大手の華鋭風電は新規雇用を見送って洋上風力に活路を見出そうとしています。そして、設備容量は大きいのですが、まだ3分の1が送電線につながっていません。送電網が未整備だったり、技術・管理面の問題で送電網脱落が起きたりしています。建設地域の分散化も求められています。また、ヨーロッパとは違って国策・国営企業中心のため、市民や地域団体の参加は見られません。その点では商業性が強いといえます。

 

②へつづく